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13211-0体感装置 ver.3.0.1

冬 / 生命と思想哲学 ... 
塩川恵 海老沢律 長澤遥香 早瀬珠

13211-0体感装置 ver.3.0.1
13211-0体感装置 ver.3.0.1
13211-0体感装置 ver.3.0.1
13211-0体感装置 ver.3.0.1

この作品は小平市を体感する装置である。
この作品の出発点として、私たちは小平市の道路に着目した。小平市という市は、青梅街道と府中街道を軸に縦横に道路が通っているため十字路が沢山ある。この交差点を「前」というキーワードでみてみると、→←↑↓と前の向きが沢山あり、前の量も多い。前が向き合っている現象を私たちは「前の衝突」と名付けた。小平は「前の衝突」地点である。府中街道青梅街道を通して各都市から前の向きを集め、前の衝突が多発しているいわば「前の深度」が高い都市である。小平市は常に各都市からのプレッシャーを感じ、どこか居心地の悪さや緊張感を覚えているのではないだろうか。
この作品はそれを体感できる装置である。 作品の4つの面からそれぞれ「新宿」「青梅」「所沢」「国分寺」で採取した動画と音が中央へ向かって照射されている。この四都市は小平を取り囲む都市であり、青梅街道と府中街道を行った先の都市である。私たちはそれぞれの都市へ出向きフィールドワークをし、動画と音を集めた。
この作品には小平が存在しない。小平市を描かないことで小平市を描いている。鑑賞者がこの装置にはいることでその人が小平を体感し小平と融合し、小平となる。つまり鑑賞者が入ることでこの作品は完成する。
小平を体感する。 鑑賞者が鑑賞者でありながら作品の一部である。つまり小平である。

ゲスト講師よりコメント

吉田愼悟
チーム冬の作品は、小平の周辺の街を見せて、小平を浮かび上がらせるというコンセプトで、小平を具体的には表現していない。このことによって多様につくり出されるイメージをとても興味深く感じた。そして、この作品は完成度もあり、大きさも適度であったために会場で存在感があった。さらに時間を掛けて何回かこの作品に触れて見た時に、景色を見ている時のような発見が、どのように変容していくのかを体験してみたいと思った。

安斎利洋
人間の環世界として場所をとらえるのではなく、場所がとらえる環世界とはなにか、という視点の転回に痺れる。建築は深呼吸するか、書物は休息するか、椅子は発情するのか、場所は痛みを感じるか、などなど。それはさておき、寒冷紗へのプロジェクトマッピングは、テクニックとしてさらに可能性がありそうです。